物件を探しているとき、収納の欄には「クローゼット(幅90cm)」のように幅だけが書かれています。内見でも、だいたい扉を開けて広さを見て終わりだと思います。
ですがその90cmに何着かけられるかは、幅だけでは決まりません。そして住み始めてから足りないと分かっても、クローゼットは増やせません。増やせるのは部屋に置く家具のほうで、そちらは床を食います。
先に結論を書きます。収納量を決めているのは、平均ではなく「いちばん」です。幅はいちばん厚い服が、高さはいちばん長い服が決めています。
同じ幅90cmでも、薄手なら36着、厚手なら9着。4倍違います。そしてロングコートを1着かけると、その下の衣装ケース2段分が使えなくなります。この記事では、その計算のやり方を書きます。
この記事が向いていない人
- 収納術やたたみ方を知りたい人。ここで扱うのは寸法と数だけです。しまい方の工夫は書きません。
- 服の量を減らす話を求めている人。減らすかどうかは持ち主が決めることなので、判断材料になる数字だけを出します。
- ウォークインクローゼットのある部屋に住んでいる人。想定しているのは、幅60〜170cmの壁付けクローゼットか押入れです。
- いま収納に困っていない人。足りているなら、この記事を読んでも何も変わりません。
「幅90cmに何着」は、そもそも成立しない
クローゼットの収納量を数える記事はたくさんありますが、「幅90cmなら約◯着」と1つの数字で書かれていることがあります。あれは成立しません。理由は単純で、1着が食う幅が服によって4倍以上違うからです。
幅を決めているのは、ハンガーではなく服
ハンガーそのものの厚みは、針金なら1mm、プラスチックでも1cm程度です。薄型のものを買えば揃えられます。ですが実際に隣の服との間隔を決めているのは、ハンガーではなく服の厚みです。Tシャツとダウンジャケットを同じ間隔でかけることはできません。
だから数えるときは、服を厚みで3つに割ります。ハンガーを含めた1着あたりの占有幅は、おおよそこうなります。
- 薄手(Tシャツ・シャツ・ブラウス)… 1着あたり2〜3cm
- 中厚(パーカー・ニット・ジャケット)… 1着あたり4〜6cm
- 厚手(コート・ダウン)… 1着あたり8〜12cm
この数字は目安なので、自分の服で確かめるほうが正確です。やり方は簡単で、同じ種類の服を10着まとめてかけて、端から端までをメジャーで測り、10で割ります。手持ちの服がそのまま基準になります。
有効幅ごとの枚数【早見表】
クローゼットの有効幅(パイプの、実際に服をかけられる長さ)を測ってから、下の表を見てください。金具の内側までで測ります。
| 有効幅 | 薄手(2.5cm) | 中厚(5cm) | 厚手(10cm) |
|---|---|---|---|
| 60cm(半間クローゼット) | 24着 | 12着 | 6着 |
| 90cm | 36着 | 18着 | 9着 |
| 120cm | 48着 | 24着 | 12着 |
| 170cm(1間クローゼット) | 68着 | 34着 | 17着 |
実際には全部が同じ厚みということはないので、持っている服を3つに仕分けて、それぞれの幅を足します。薄手20着なら50cm、中厚10着なら50cm、これだけで100cm。幅90cmのクローゼットには、もう入りません。
だから、衣替えは「減らす」作業になる
この表からもうひとつ分かることがあります。冬物と夏物を同時にかけておくことは、構造的にできません。厚手9着ぶんの幅があれば、薄手なら36着かかる。冬物を1着しまうたびに、夏物が4着ぶんの場所を取り戻せるという関係です。
一人暮らしの部屋で「収納が足りない」と感じるタイミングが秋から冬に集中するのは、単に服が増えるからではなく、1着あたりの占有幅が4倍になるからです。数が同じでも入らなくなります。
高さは、いちばん長い服が決める
幅の次は高さです。こちらのほうが、失われている量に気づきにくい。
ハンガーパイプの標準的な取付高さは、床から約175cm(一段掛けの場合)です。ここから服の丈を引いた残りが、下に使える高さになります。衣類の丈は、おおよそ次のとおりです。
- Yシャツ 70〜75cm / ブラウス 60〜70cm / ジャケット 70〜80cm
- パンツ 60〜70cm / スカート 60〜90cm
- ワンピース 100〜120cm / ロングコート 120〜140cm
そして、クローゼットの下に置く衣装ケースは高さ18〜30cmが標準です(幅39〜45cm・奥行53〜55cm)。この2つを突き合わせると、こうなります。
| いちばん長い服 | 下に残る高さ | 入る衣装ケース(高さ30cm) |
|---|---|---|
| シャツ・ジャケット(75cm) | 100cm | 3段 |
| スカート(90cm) | 85cm | 2段 |
| ワンピース(120cm) | 55cm | 1段 |
| ロングコート(140cm) | 35cm | 1段 |
ここが見落とされやすいところです。ロングコートを1着かけると、その下は一列ぶん、ケース2段分が使えなくなります。コートは冬しか着ないのに、場所は一年中取り続ける。しかも幅の側でも1着で10cm食っています。
対処は簡単で、長い服を1か所にまとめることです。ばらばらにかけると、下の空間が全部そのぶん低くなります。端に寄せておけば、残りの下には3段積める。同じ服の量でも、並べ方だけで収納が1段ぶん変わります。
奥行が足りないと、幅があっても掛からない
3つ目は奥行です。ここは幅や高さと違って、足りているか足りていないかの二択になります。
ハンガーの肩幅は、メンズで42〜44cm、レディースで36〜38cmです。服をかけた状態の前後の幅はおよそ55cmになるので、クローゼットの内寸奥行は55〜60cmが目安とされています。ここを下回ると、扉が閉まらないか、服が押しつぶされます。
逆に、深すぎる場合もあります。押入れの奥行は75〜91cmで、これは布団をしまうための寸法です。ここにハンガーをかけると、手前に20〜30cmの帯が余ります。使えない空間ではありませんが、奥の服を取るのに手前をどかす必要が出てきて、結局使わなくなりがちです。
押入れ用のハンガーラックの奥行が40cm台で作られているのは、この事情によります。ハンガーラックを選ぶときは、幅と耐荷重だけでなく奥行が自分の収納に合っているかを先に見てください。奥行10cm前後の突っ張りタイプは壁際用で、押入れの中に置くものではありません。
もうひとつ、奥行の深い収納は奥のほうの空気が動きません。締め切ったまま服を詰めると、そこだけ湿気が抜けにくくなります。扉を開ける習慣がないなら、詰めすぎないほうが無難です(除湿機を使っている人は、その置き場所の候補にもなります)。
重さは、たいてい先に尽きない
ハンガーラックを買い足すとき、耐荷重が気になると思います。ここは計算すると安心できる箇所です。
服1着の重さは、薄手で0.2kg、中厚で0.5kg、厚手で1.2kg前後です。さきほどの表と掛け合わせると、幅90cmをどの種類で埋めても、合計は7〜11kgに収まります。
- 薄手36着 × 0.2kg = 約7kg
- 中厚18着 × 0.5kg = 約9kg
- 厚手9着 × 1.2kg = 約11kg
面白いのはどれで埋めても同じくらいに落ち着くことです。厚い服は重いぶん、かけられる数が減るので、相殺されます。幅が先に尽きるので、重さは上限に届きにくい。
これをハンガーラック6機種の公表値と突き合わせると、パイプ単体の耐荷重は10kgから75kgまで、7倍以上の開きがあります。75kgの機種なら心配は要りません。ただし10〜15kgの機種に冬物をぎっしりかけると、上限に届きます。厚手だけで埋めた約11kgは、そこに入ってしまう数字です。
耐荷重には「全体」と「パイプ1本」の2種類が書かれていることが多く、効いてくるのはパイプのほうです。全体90kgでもパイプ75kgの機種もあれば、全体20kgでパイプ10kgの機種もある。カタログの大きい数字だけを見ないでください。
なお、自分の服の重さはキッチンスケールで測れます。よく着る1着を載せてみると、上の目安が自分に当てはまるかどうかがすぐ分かります。
足りないと分かったときの順番
計算して足りなかった場合、打つ手には順番があります。床を使わない手から試すほうが、狭い部屋では得です。
- 長い服を端にまとめる。費用ゼロ。下に残る高さが揃うので、ケースを1段増やせることがあります
- 季節外を掛けるのをやめる。厚手1着ぶんの幅で、薄手が4着かかります。畳んでケースに移すだけで幅が空きます
- クローゼットの中に足す。下の空間に押入れ用のラックや衣装ケースを入れます。部屋の床は1cmも使いません
- 部屋にハンガーラックを置く。ここで初めて床を使います。壁際の突っ張りタイプなら奥行10cm前後で済みます
4番まで来たときは、6畳の家具配置で書いた通路60cmを潰さないかを先に確認してください。収納を足して動線が消えると、部屋のほうが使えなくなります。それと、服を掛けたまま置くラックは、部屋の中でいちばん視界に入る面積の大きい家具になります。
この記事とつながる比較記事
| やりたいこと | 記事 |
|---|---|
| 掛ける場所そのものを足したい | ハンガーラック |
| 洗濯物の干し場と収納を兼ねたい | ランドリーラック |
| 掛けたままシワを伸ばしたい | 衣類スチーマー |
| 着る前に全身を確認したい | 姿見(全身鏡) |
入居前なら、家電を買う前に測る7か所と一緒にクローゼットも測っておくと、内見の往復が減ります。買う前に考えたい人は買わなくていいもののほうが先です。
まとめ
- 収納量は平均ではなく「いちばん」で決まる。幅はいちばん厚い服、高さはいちばん長い服
- 1着の占有幅は薄手2〜3cm/中厚4〜6cm/厚手8〜12cm。幅90cmなら36着・18着・9着
- だから「幅◯cmで◯着」は成立しない。同じ幅で4倍変わる。10着かけて測れば自分の値が出る
- ロングコート1着で、下の衣装ケース2段分が消える。長い服は端にまとめる
- 奥行は55〜60cmが目安(ハンガーの肩幅42〜44cm)。押入れの75〜91cmは深すぎて手前が余る
- 重さは幅より後に尽きる。幅90cmを埋めても7〜11kg。ただしパイプ耐荷重10〜15kgの機種は上限に届く
- 耐荷重は「全体」ではなく「パイプ1本」を見る。6機種で10kg〜75kgと7倍以上の開きがある
- 足りないときは床を使わない手から。並べ替え → 季節外を畳む → 収納の中に足す → 最後に部屋へ
収納が足りないと感じたら、まずメジャーで3か所——有効幅、パイプの高さ、内寸の奥行——を測ってみてください。数字が出ると、買い足すべきなのか、並べ替えるだけで済むのかが分かれます。狭い部屋では、床を使わずに済む解決策のほうが、たいてい上等です。
※1着あたりの占有幅・服の重さ・かかる枚数は、一般的な衣類の寸法をもとに当サイトが算出した目安です。素材と仕立てによって実際の値は変わります。ハンガーの肩幅、衣類の丈、ハンガーパイプの標準取付高さ、衣装ケースの寸法は、クローゼット設計で用いられている一般的な目安寸法を参照しました。押入れ・クローゼットの奥行は物件によって異なります。ハンガーラックの耐荷重は各メーカーの公表値で、当サイトのハンガーラックの記事に掲載した6機種の値です。耐荷重は静止した状態での値であり、掛け方の偏りによって条件は変わります。
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