一人暮らしを始めるときの「買わなくていいもの」リストは、たいてい誰かの生活習慣で書かれています。自炊しないならこれは要らない、来客がないならこれは要らない、という具合に。それはそれで正しいのですが、習慣は人によって違うので、読んでも自分の答えにはなりません。
この記事では、習慣ではなく置き場所から判断します。6〜8畳のワンルームで家電を1台増やすというのは、機能を1つ足すことではなく、限られた天板の面積を明け渡すことだからです。
先に結論を書きます。「要るか要らないか」で考えると答えが出ません。「どこを空けるか」で考えると出ます。そして狭い部屋では、仕事が重なっている家電を2台置くコストが、機能の差より大きくなります。この記事では重なっている組み合わせを4つ挙げて、それぞれ「両方要る条件」と「片方でいい条件」を分けます。
この記事が向いていない人
- すでに置き場所に余裕がある人。この記事の前提は「天板が足りない」ことです。足りているなら好きなだけ置いてください。
- 節約のために減らしたい人。ここで扱うのは面積であって金額ではありません。電気代の話はこちらの記事にまとめています。
- 「これは絶対に要らない」という断定が欲しい人。この記事は条件を分けるだけで、言い切りません。条件が変われば答えも変わります。
家電が占めるのは、カタログの幅×奥行ではない
減らす話の前に、そもそも1台がどれだけ場所を食うのかを正しく見ておきます。ここを間違えると、計算上は置けるのに現物が入らない、ということが起きます。
放熱スペースが要る
電子レンジには、メーカーが指定する放熱の間隔があります。ある機種では「右10cm以上・天面10cm以上」。幅45cmの本体でも、実際には55cmぶんの幅を明け渡すことになります。この指定は製品ページになく取扱説明書のPDFにしか書かれていないことが多いので、買う前に見る人はほとんどいません。
開けるための高さが要る
電気圧力鍋は、ふたを開けたときの高さが問題になります。本体高さ21cmの機種でも、ふたを開けると約42.7cmまで伸びる。吊り戸棚の下や水切りラックの下に置くと、ふたが開きません。置けたのに使えない、という失敗はこの形で起きます。
壁からの余白が要る
加湿器は、各社とも壁や家具から一定の距離をあけるよう取扱説明書で指定しています。吸気と、吹き出した湿気が壁に当たり続けないようにするためです。壁にぴったり寄せて置ける家電のほうが、むしろ少数です。
つまり本体サイズは「最低限これだけは要る」という下限であって、実際の専有面積ではありません。減らす判断をするときは、この膨らんだあとの面積で考えます。
面積はA4用紙で数える
cm²で言われてもピンと来ないので、基準をひとつ決めます。A4用紙は21×29.7cm、面積にして約624cm²です。手元にすぐある紙なので、実際に置き場所に並べて確かめられます。
当サイトの比較記事で確認した本体サイズを、この基準で換算するとこうなります。
| 家電 | 設置面積(幅×奥行) | A4換算 |
|---|---|---|
| 衣類スチーマー | 約119cm²(本体のみ) | 約0.2枚 |
| セラミックファンヒーター | 165〜735cm²(4.5倍の開き) | 約0.3〜1.2枚 |
| 加湿器 | 例:約160cm²/約624cm² | 約0.3枚/約1枚 |
| 電気圧力鍋 | 例:約624cm²/約807cm² | 約1枚/約1.3枚 |
| 珪藻土バスマット | 1,247〜2,444cm²(約2倍の開き) | 約2〜3.9枚 |
ここで見てほしいのは、同じカテゴリーの中の開きです。セラミックファンヒーターは最小と最大で4.5倍違う。A4で0.3枚と1.2枚では、置ける場所がまったく変わります。「ヒーターを置くか置かないか」の前に、「どのヒーターなら置けるか」で解決する場面はかなりあります。減らす判断をする前に、まず小さい機種を探したほうが早いこともある。
仕事が重なっている4つの組み合わせ
それでも足りないときに、初めて減らす話になります。狙うのは仕事が重なっているものです。機能が全部違う家電を我慢して減らすと、生活のほうが痩せます。
1. トースターと電子レンジ
片方でいい条件:オーブン機能付きの電子レンジを持っている(または買う予定がある)なら、トースターは無くても食パンは焼けます。天板を1枚まるごと空けられます。
両方要る条件:単機能レンジしか置けない場合。そして焼き上がりにこだわる場合です。トースターは短時間で表面だけを高温にする作りで、この点はオーブンレンジと差が出ます。毎朝トーストを食べる人にとっては、面積を明け渡す価値があります。詳しくはトースターの比較記事と小型電子レンジの比較記事にまとめています。
2. 炊飯器と電気圧力鍋
片方でいい条件:電気圧力鍋の多くは炊飯もできます。煮込みを作る習慣があるなら、圧力鍋1台に寄せるほうが面積効率は上です。
両方要る条件:毎日ごはんを炊く人。ここは正直に書きますが、炊飯の使い勝手は専用機のほうが上です。予約炊飯、保温、内釜の洗いやすさが違う。圧力鍋で煮込みを作っている間はごはんが炊けない、という制約も毎日だと効いてきます。小型炊飯器と電気圧力鍋のどちらを軸にするかは、煮込みの頻度で決めるのが素直です。
3. 布団乾燥機と除湿機
この2つは、重なる部分と重ならない部分がはっきり分かれます。
- 重なる:部屋干しの洗濯物を乾かす用途。衣類乾燥機能のある除湿機なら、布団乾燥機の送風アタッチメントと役割がぶつかります
- 重ならない:布団を温める用途。除湿機にはできません。冬の寝る前に布団を温めたいなら、これは布団乾燥機にしかできない仕事です
片方でいい条件:部屋干しが主目的で、布団を温めることに関心がないなら、除湿機だけで足ります。除湿機は使う季節が長いぶん、面積あたりの稼働率でも有利です。
両方要る条件:布団を温めたい人。布団乾燥機は使わない時期にしまえるので、通年で天板を占有するわけではない点も考慮に入れてください。
4. 電気ケトルと電子レンジ
片方でいい条件:お湯を使うのがマグカップ1杯ぶんだけなら、レンジでも足ります。ケトルの置き場所を丸ごと省けます。
両方要る条件:1日に何度もお湯を使う人、カップ麺や鍋に使う人。量が増えるほどケトルのほうが速く、この差は毎日効いてきます。ケトルは設置面積も小さい部類なので、面積対効果はむしろ良いほうです。電気ケトルの比較記事で機種ごとの違いを扱っています。
なおサーキュレーターと扇風機も重なる組み合わせですが、こちらはサーキュレーター1台に寄せるほうが素直です。送風を人に当てることも、部屋の空気を回すこともできて、本体が小さい。扇風機にしかできない仕事が、ワンルームではあまり残りません。
買う前に決める順番
ここまでを手順にすると3つです。
- 置く場所を先に決めて、A4用紙を並べる。何枚置けるかを数える。買う機種を決めてから場所を探すと、たいてい入りません
- 放熱・余白・開閉のぶんを足す。取扱説明書のPDFに書いてあります。製品ページには無いことが多い
- 足りなければ、まず小さい機種を探す。それでも足りないときだけ、重なっている1台を落とす。順番が逆になると、要るものを我慢して要らないものを残すことになります
まとめ
- 「要るか要らないか」ではなく「どこを空けるか」で判断する
- カタログの幅×奥行は下限。放熱・壁からの余白・ふたを開ける高さを足した面積が実際の専有面積
- 面積はA4用紙(約624cm²)で数えると現物で確かめられる
- 同じカテゴリーでも設置面積は最大4.5倍違う。減らす前に小さい機種を探す
- 減らすなら仕事が重なっているものから。機能が全部違うものを我慢しても、生活が痩せるだけ
狭い部屋で暮らすというのは、持ち物を減らすことそのものが目的ではありません。面積という予算の中で、何に配分するかを決めているだけです。毎朝トーストを焼く人がトースターにA4一枚を割くのは、まったく合理的な配分です。使わないものが同じ面積を占めていることのほうが、問題として大きい。
※設置面積は各メーカーが公表している本体サイズ(幅×奥行)から当サイトが算出した目安で、放熱・余白・開閉に必要な空間は含みません。A4換算は21×29.7cm=623.7cm²を1枚として計算しています。放熱スペースや余白の指定は機種ごとに異なるため、購入前に各機種の取扱説明書をご確認ください。仕様は予告なく変更される場合があります。
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