賃貸のワンルームだと、エアコンは最初から付いています。選んだのは自分ではないので、性能を気にすることもあまりない。ところが冬になって「効きが悪い」と感じたとき、それが機種の問題なのか部屋の問題なのかは、判断できたほうがいいです。
判断の材料は、たいていエアコン本体に貼られたシールか、型番を検索すれば出てきます。「冷房6〜9畳」のような表示です。
先に結論を書きます。この「6〜9畳」は範囲ではありません。木造なら6畳、鉄筋なら9畳、という意味です。自分の部屋がどちらかで、見る数字が決まる。そして冷房と暖房で別の数字が書かれていて、暖房のほうが狭くなります。冬に効かないと感じるのは、ここに理由があることが多い。
この記事が向いていない人
- エアコンを買う人。この記事は備え付けのエアコンが自分の部屋に足りているかを見る話です。機種の比較はしません。
- 取り付け工事や電源の相談をしたい人。扱いません。管理会社か施工業者が窓口です。
- 効きが悪い原因をすぐ直したい人。この記事で分かるのは「そもそも能力が足りているか」までです。フィルターの目詰まりや故障は別の話になります。
「6〜9畳」は範囲ではない
いちばん誤解されているのがここです。2つの数字は、下限と上限ではありません。条件の違う2つの部屋の答えです。
- 小さいほうの数字=木造の部屋。熱が逃げやすいので、同じ能力でカバーできる面積が小さい
- 大きいほうの数字=鉄筋の部屋。断熱性が高いので、同じ能力でより広い面積をまかなえる
富士通ゼネラルは、この読み方をはっきり書いています。「11〜17畳」と表示されていたら、木造なら11畳、鉄筋なら17畳という意味だと。構造によって冷暖房の効率が違うので、幅を持たせているという説明です。
つまり「6〜9畳用だから、8畳の部屋でも真ん中あたりで大丈夫だろう」という読み方は間違いです。木造の8畳なら、その機種は能力不足ということになります。
冷房と暖房で数字が違う
カタログには冷房と暖房の畳数が別々に書かれています。そしてたいてい暖房のほうが小さい数字です。
たとえば「冷房6〜9畳/暖房6〜7畳」と書かれていたら、こう読みます。
暖房のほうが狭くなるのは、外との温度差が大きいからです。夏に室温を27℃に保つとき、外が35℃なら差は8℃。冬に20℃を保つとき、外が5℃なら差は15℃あります。冬のほうが、同じ部屋でも仕事量が多い。だから同じエアコンでも、暖房でカバーできる面積は小さくなります。
ここが賃貸で効いてきます。備え付けのエアコンは、部屋の広さに対してぎりぎりの能力で選ばれていることがあります。冷房の数字で見れば足りていても、暖房では足りない。「夏は快適なのに冬だけ効きが悪い」という感覚は、たいていこれです。故障ではありません。
この数字が前提にしている家
もうひとつ知っておくと、数字との距離感がつかめます。畳数のめやすは、JIS C 9612 という規格をもとに算出されています。
三菱電機が公表している算出条件は、こうなっています。
- 平均的な木造住宅(南向き)
- 室内設定温度は冷房27℃、暖房20℃
- 東京をモデルにしている
- 運転時間は6:00〜24:00の18時間
- 冷房期間は5月23日〜10月4日、暖房期間は11月8日〜4月16日
条件がかなり具体的に決まっていることが分かると思います。南向きで、東京で、1日18時間つける前提。北向きの部屋、寒い地域、つけっぱなしにしない使い方では、当然ずれます。
そしてこの規格のもとになった基準が定められたのは1964年です。当時の住宅は断熱材がほとんど入っていないのが普通でした。めやすの数字は、その頃の家を想定したところから出発しています。
だから、ずれ方は2方向あります。断熱がしっかりした新しい建物では、めやすより広い部屋でも足りることがある。逆に古い木造アパートで、窓が大きく、隙間風がある部屋なら、めやすどおりでも足りないことがある。数字は出発点であって、答えではありません。
自分の部屋に当てはめる
手順は3つです。
- 建物の構造を確認する。木造か、鉄筋(鉄筋コンクリート・鉄骨鉄筋)か。物件情報か賃貸借契約書に書いてあります
- エアコンの畳数表示を見る。本体のシール、または型番で検索。冷房と暖房の両方をメモします
- 木造なら小さいほうの数字、鉄筋なら大きいほうの数字と、部屋の広さを比べる。冬の判断は暖房の数字で
| 自分の部屋 | 見る数字 | 冬に見るべきもの |
|---|---|---|
| 木造アパート | 小さいほう | 暖房の小さいほう |
| 鉄筋のマンション | 大きいほう | 暖房の大きいほう |
| 鉄骨造(軽量鉄骨など) | 木造寄りで見ておく | 同上 |
ひとつ補足しておくと、「6畳」という表記そのものにも幅があります。畳の規格は地域や建物によって違い、6畳間の実面積はおよそ8.7〜10.9㎡と、26%ほど開きがあります。畳数のめやすの「畳」と、自分の部屋の「畳」が同じとは限りません。広いほうの規格の部屋なら、めやすはより厳しく見ておいたほうがいい。部屋の実寸を測っておくと、この判断がしやすくなります(測り方はこちら)。
畳数だけでは決まらない条件
建物の構造と広さで当たりはつきますが、それだけでは決まりません。次の条件に当てはまる部屋は、表示どおりの畳数でも足りないことがあります。
- 最上階:屋根が日射をまともに受け、その熱が天井から降りてきます。夜になっても下がりにくい
- 角部屋:外気に接する壁の面積が中部屋より多い。人気の条件ですが、熱の出入りは増えます
- 西向き、または窓が大きい:窓は壁より断熱性能が低く、部屋のなかで熱がいちばん出入りする場所です
- 天井が高い、ロフトがある:畳数は床面積の話なので、空気の量が想定より多くなります。暖かい空気は上に行くので、暖房で足元が暖まらない形で効いてきます
- 築年数が古い:断熱材が薄く、隙間もあります。木造か鉄筋かという区分より、こちらのほうが効くこともあります
ワンルームだと最上階の角部屋あたりは物件としては人気ですが、冷暖房の条件としては厳しい側です。当てはまる数が多いほど、表示の数字は自分の部屋には甘く見えていると考えてください。
その前に、「設備」か「残置物」かを確認する
能力が足りない、あるいは古くて効きが悪いと分かったとき、先に確認しておくべきことがあります。そのエアコンが契約上どういう扱いになっているかです。
賃貸の部屋に付いているエアコンには、2つの立場があります。
| 設備 | 残置物 | |
|---|---|---|
| 何か | 物件の設備として貸主が用意したもの | 前の入居者が置いていったもの |
| 契約書の記載 | 「エアコン1基」などと設備欄にある | 設備欄に無い、または残置物と明記 |
| 通常の使用で壊れたら | 貸主が修理・交換を検討する | 借主の自己負担 |
設備として貸されているものが通常の使い方で壊れた場合、貸主には、借主が普通に使える状態を保つ義務があります(民法の修繕義務)。だから修理や交換は貸主側で検討されます。
ところが残置物はそうなりません。前の入居者が置いていっただけのものなので、貸主が責任を負う対象に入っていない。壊れたときの修理費も、要らなくなったときの撤去費用も、原則として自分持ちになります。「部屋に付いていたのだから直してもらえる」とは限らない、ということです。
確認先は書類です。賃貸借契約書、重要事項説明書、付帯設備表、入居時のチェックシート。設備欄に「エアコン」と書かれていれば設備として扱われる可能性が高い。書かれていなければ、管理会社に聞いておいたほうがいいです。
これは入居してすぐ、まだ困っていないうちに確かめておく類の話です。真夏や真冬に壊れてから調べ始めると、扱いを巡って話が長引くぶんだけ、暑いか寒い部屋で過ごす日が増えます。
なお、能力不足そのものは故障ではないので、「畳数が足りないから交換してほしい」という要求は、設備であっても通りません。そこは次の話になります。
足りないと分かったら
賃貸ではエアコン本体を替えられません。できるのは2方向です。
足りないぶんを足す
暖房が足りないなら、セラミックファンヒーターのような補助暖房を、必要な場所と時間にだけ使うのが現実的です。部屋全体を暖める効率ではエアコンに勝てないので、足元や脱衣所など、局所と短時間に絞ると成立します。
ただし電気ヒーターは消費電力がそのまま電気代です。1200Wを1日5時間つければ、それだけで月5,000円を超えます(計算はこちら)。効かないエアコンを強で回し続けるのと、どちらが安いかは一度計算したほうがいいです。
逃げる熱を減らす
能力が足りないというのは、裏を返せば熱が逃げているということです。ワンルームでいちばん熱が出入りするのは窓なので、断熱シートや厚手のカーテンで層を作ると条件が変わります。
これは結露対策とまったく同じ手です。窓の表面温度を上げることが、結露を減らすことと、暖房の負荷を下げることの両方になります。冬に打つ手としては、これがいちばん一石二鳥に近い。
まとめ
- 「6〜9畳」は範囲ではない。木造なら6畳、鉄筋なら9畳という意味
- 冷房と暖房で数字が違い、暖房のほうが狭い。外との温度差が大きいぶん、冬は仕事量が多い
- 「夏は快適なのに冬だけ効かない」は故障ではなく、暖房の畳数が足りていない可能性がある
- めやすの前提は南向き・東京・1日18時間。もとになった基準は1964年で、無断熱の家が想定だった
- 「6畳」の実面積も規格で26%ほど違う。表示の畳と自分の部屋の畳は同じとは限らない
- 最上階・角部屋・西向き・天井が高い・築古は、表示どおりでも足りないことがある
- 「設備」か「残置物」かを先に確認する。設備なら貸主に修繕義務があるが、残置物は自己負担。契約書と付帯設備表で分かる
- 足りないなら、補助暖房を局所で足すか、窓から逃げる熱を減らすか。後者は結露対策と同じ手
備え付けの設備は「あるもの」として受け入れがちですが、能力が数字で書いてある以上、足りているかどうかは判定できます。効かないと感じたときに、我慢するのか、補助を足すのか、窓に手を入れるのかを選べる。判断の材料があるかどうかの差は、冬のあいだずっと続きます。
※エアコンが「設備」か「残置物」かの取り扱い、および修繕義務の考え方は一般的な整理です。実際の判断は個々の賃貸借契約の内容や物件の状況によって異なるため、契約書をご確認のうえ、管理会社にご相談ください。畳数のめやすは日本産業規格 JIS C 9612 にもとづいてメーカーが算出している値です。本文に記載した算出条件は三菱電機が、木造・鉄筋の読み方は富士通ゼネラルが公表している内容にもとづきます。畳数の具体的な数値は読み方を説明するための例であり、実際の値は機種ごとに異なります。効き方は建物の断熱性能、部屋の向き、窓の大きさ、地域、階数などによって変わります。設備の不具合が疑われる場合は管理会社にご相談ください。
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