冬の朝、カーテンを開けると窓一面が水滴で濡れている。サッシの隅に水がたまっている。ワンルームだと窓と寝床の距離が近いぶん、これがかなり気になります。
対策としてよく言われるのは「湿度を下げる」「換気する」あたりですが、どちらも半分しか当たっていません。結露は湿度が高いから起きるのではありません。露点より冷たい面があるから起きます。湿度40%でも、じゅうぶんに冷たい面があれば結露します。
この記事では、室温と湿度から「何℃より冷たい面で結露が始まるか」を出せる表を作りました。自分の部屋の数字を当てはめると、対策の順番が決まります。
先に結論を書きます。賃貸のワンルームで部屋側からできることは3つだけです。冷たい面を減らす、湿気を出さない、空気を止めない。窓そのものを替えられない以上、この3つの外に打つ手はありません。そして加湿器を使えば結露は増えます。これは故障ではなく、仕組み上そうなります。
この記事が向いていない人
- 健康への影響を知りたい人。この記事では扱いません。体調に関わる心配がある場合は、医療機関や自治体の相談窓口にあたってください。
- 内窓の設置や断熱改修を検討している人。ここで書くのは、工事をせず、原状回復できる範囲の話だけです。
- すでに発生してしまったカビを取りたい人。除去の方法や薬剤の効果には触れません。この記事は発生条件を減らす話に限ります。
結露が起きる条件は1つだけ
空気が抱えられる水蒸気の量は、温度で決まります。暖かい空気ほどたくさん抱えられて、冷えると抱えきれなくなる。抱えきれなくなった分が水になって出てくる、その境目の温度が露点です。
だから結露が起きるかどうかは、この一行で決まります。
その面の表面温度が、部屋の空気の露点より低い → 結露する
部屋の湿度が何%かは、露点を決める材料のひとつでしかありません。窓が十分に冷たければ、乾いた部屋でも結露します。
露点の早見表
室温と湿度から露点を計算しました。表の数字より冷たい面があれば、そこが結露します。
| 室温 \ 湿度 | 40% | 50% | 60% | 70% |
|---|---|---|---|---|
| 16℃ | 2.4℃ | 5.6℃ | 8.2℃ | 10.5℃ |
| 18℃ | 4.2℃ | 7.4℃ | 10.1℃ | 12.4℃ |
| 20℃ | 6.0℃ | 9.3℃ | 12.0℃ | 14.4℃ |
| 22℃ | 7.8℃ | 11.1℃ | 13.9℃ | 16.3℃ |
| 24℃ | 9.6℃ | 12.9℃ | 15.8℃ | 18.2℃ |
使い方は単純です。室温20℃・湿度50%の部屋なら、露点は9.3℃。9.3℃より冷たい面が部屋の中にあれば、そこが濡れます。真冬の単板ガラスの室内側は外気に引っぱられてかなり低くなるので、この条件だと窓は高い確率で結露します。
加湿器を使うと結露は増える
表を縦ではなく横に読むと、加湿の影響が見えます。室温20℃の行だけ取り出します。
| 湿度 | 露点 | 湿度40%のときとの差 |
|---|---|---|
| 40% | 6.0℃ | ― |
| 50% | 9.3℃ | +3.3℃ |
| 60% | 12.0℃ | +6.0℃ |
| 70% | 14.4℃ | +8.4℃ |
湿度を40%から60%に上げると、露点が6.0℃から12.0℃へ、6℃ぶん上がります。これは「12℃より冷たい面はすべて結露する面に変わる」ということです。6℃までしか濡れなかったものが、12℃で濡れるようになる。冬の窓まわりで6℃の差は大きい。
加湿器の比較記事でも、購入者のレビューに「結露が増えた」という声が出てきます。これは製品の不具合ではなく、加湿できている証拠として仕組みどおりに起きている現象です。
一般に、室内の湿度は40〜60%程度が目安とされます。ただし結露だけを見るなら、この範囲の中でも低いほうが有利です。表のとおり、湿度を10%上げるごとに露点はおよそ3℃ずつ上がります(+3.3℃、+2.7℃、+2.4℃)。どの段階でも影響の大きさは変わらないので、「ここまでなら結露しない」という安全な線はありません。乾燥が気にならなくなる最低限のところで止めるのが、結露との折り合いとしては現実的です。
置き場所で、結露する場所が変わる
同じ加湿器でも、どこに置くかで結果が変わります。避けたいのは次の3つです。
- 床の上。冷たい空気は下に溜まります。露点の低い空気に湿気を足すことになるので、放出した水分が近くで結露しやすい
- 窓際。部屋でいちばん冷たい面のすぐそばに湿気を送り込む配置です
- 壁際。湿気が滞留します。加湿器はもともと壁や家具から距離をあけるよう指定されている機種が多く、この点でも壁際は不利です
置くなら部屋の中央寄りで、床から少し高い位置。棚やローテーブルの上に載せるだけでも条件が変わります。湿度センサーを積んだ機種では、もうひとつ利点があります。床置きだと、機械の周りだけ湿った空気をセンサーが読んでしまい、部屋全体はまだ乾いているのに加湿を弱めてしまうことがあります。「加湿器を回しているのに乾燥する。なのに窓だけ濡れる」という状態は、この置き場所で起きます。
入れる水は水道水
結露からは少し離れますが、加湿器の話が出たので触れておきます。各メーカーとも、加湿器に入れる水は水道水を指定しています。ミネラルウォーター、浄水器を通した水、井戸水は使わないよう明記されている機種がほとんどです。
理由は塩素です。水道水には塩素が含まれていて、タンクの中で雑菌やぬめりが出にくい。塩素を抜いた水を入れると、水あかが増え、タンクや加湿フィルターの手入れの頻度が上がります。「体にいい水を入れたほうがいいのでは」と考えて浄水を使うと、手入れの手間が増える方向に働きます。取扱説明書の指定どおり、水道水を使ってください。
「洗剤を塗ると結露しない」は本当か
食器用洗剤を薄めて窓に塗る、という方法がよく紹介されています。効果はありますが、言われているものとは違う効果です。ここは正確に押さえておいたほうがいい。
洗剤に含まれる界面活性剤は、水の表面張力を下げます。表面張力が下がると、窓についた水は丸い粒にならず、薄い膜になって広がり、そのまま下へ流れ落ちます。曇りどめと同じ原理です。
ここが肝心なところです。界面活性剤は露点を変えません。だから結露する量は1滴も減りません。変わるのは水の見え方と流れ方だけ。窓が水滴で埋まらなくなるので「結露しなくなった」ように見えますが、同じ量の水は出ていて、それが下に集まっています。
実用上の注意は3つあります。
- 水はサッシに集まる。ガラス面が乾いて見えても、下に流れているだけです。サッシに水がたまるので、吸水テープを貼るかタオルを敷いておく必要があります。窓を拭く手間が、サッシを拭く手間に移るだけということもあります
- ゴムパッキンには塗らない。界面活性剤はゴムを傷めるおそれがあります。ガラス面だけに留めてください
- 長くは続かない。塗った膜は流れる水と一緒に落ちていくので、繰り返し塗り直すことになります
結論としては、これは結露対策ではなく掃除を楽にする手です。窓を毎朝拭くのが面倒だという理由なら使う価値があります。ただし、あとで出てくる「賃貸では結露の放置が費用になる」という話に対しては、何の解決にもなっていません。水は出続けているので、サッシや壁際の状態は変わらないからです。断熱や除湿と同じ列に並べないでください。
部屋側でできることは3つだけ
1. 冷たい面を減らす
露点を下げるより、冷たい面を無くすほうが確実です。賃貸でできるのは、窓に断熱シートを貼る、厚手のカーテンにする、といったあたり。ガラスと室内の空気の間に動かない空気の層を作るのが狙いです。
断熱シートを選ぶときは、空気層が密閉されているかを見てください。緩衝材(いわゆるプチプチ)を流用する方法が知られていますが、梱包用のものは片面が凸凹のまま開いています。この形だと空気が層に留まらず、断熱材としては本来の働きをしません。窓用として売られているものには、凸凹の両面を平らなシートで挟んで空気層を閉じた構造のものがあり、こちらのほうが理屈が通っています。表面が平らなぶん、ほこりも溜まりにくい。
貼るときは剥がせるタイプの両面テープを使ってください。強い粘着テープを使うと、シーズンの終わりに剥がすとき糊が残ります。窓まわりに糊を残すのは、退去時に面倒を持ち込むことになります。
見落とされがちなのが家具の裏です。北側や外壁に面した壁は、窓ほどではないにせよ冷えます。そこに家具をぴったり付けると、壁と家具の間の空気が動かなくなり、壁面が余計に冷える。目安として5cmほど離すだけで条件が変わります。狭い部屋ほど「壁にぴったり」で配置しがちですが、外壁側だけは隙間を作ってください。
2. 湿気を出さない
ワンルームで湿気の発生源になるのは、主にこの3つです。
- 洗濯物の部屋干し。洗濯物に含まれる水分がそのまま部屋に出ます。冬に部屋干しが増えるのと結露の季節が重なるので、影響が大きい
- 調理。湯を沸かす、鍋を煮る。換気扇を回すかどうかで差が出ます
- 浴室。入浴後にドアを開けたままにすると、浴室の湿気が居室に流れ込みます。ドアを閉めて換気扇を回すほうが居室のためになります
部屋干しをやめられないなら、除湿機を回しながら干すのが素直な解決です。乾くのが速くなるうえ、部屋に出る水分を機械が回収してくれるので、結露対策と洗濯物の乾燥を同時に片付けられます。干す位置を窓から離すだけでも、窓面に届く水分は減ります(ランドリーラックの置き場所を決めるときの判断材料になります)。布団乾燥機の送風機能を使う手もありますが、こちらは部屋の水分を回収しないので、結露という点では除湿機のほうが筋が通ります。
3. 空気を止めない
同じ部屋でも、空気が動いていない場所は局所的に冷えます。カーテンの内側、家具の裏、部屋の隅。結露が特定の場所にだけ出るのは、たいていここが理由です。
サーキュレーターを窓や壁に向けて回すと、その面の空気が入れ替わって表面温度が下がりきらなくなります。人に風を当てる使い方ではないので、弱運転で足ります。冬にサーキュレーターを使う理由としては、暖気の攪拌よりこちらのほうが分かりやすいかもしれません。
暖房の種類でも結露は変わる
意外に効くのがここです。暖房には、水蒸気を出すものと出さないものがあります。
- 出さない:エアコン、セラミックファンヒーター、オイルヒーター、電気毛布。電気で発熱させるだけなので、部屋の水分は増えません
- 出す:石油ストーブ、ガスファンヒーターなどの開放式。燃料を燃やすと、燃やした量とほぼ同じだけの水が水蒸気として部屋に出ます
灯油を1L燃やせば、おおよそ1L分の水が部屋に加わります。ワンルームのような狭い空間では、これは加湿器を1台つけているのに近い影響になります。結露に悩んでいて開放式の暖房を使っているなら、暖房を電気式に替えるのが、対策として一番効くこともあります。
賃貸では、放置そのものが費用になる
ここまでは物理の話でしたが、賃貸に住んでいるなら、もうひとつ知っておいたほうがいい話があります。結露を放置した結果カビやシミが広がった場合、その修繕費が借主の負担になることがあります。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、原状回復を「賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義しています。経年変化や通常の使用による傷みは貸主の負担ですが、そこから外れたものは借主の負担になります。そしてこのガイドラインには、結露を放置して拡大したカビやシミが借主負担になり得ることが挙げられています。カビの発生を防ぐために定期的に換気や清掃を行うことも、借主に期待される管理の例として書かれています。
つまり「毎朝拭くのが面倒だから放っておく」は、退去時にお金で戻ってくる可能性があるということです。同じ結露でも、拭いている人と放置した人では、退去時の扱いが変わり得ます。
もうひとつ大事なのが、自分の手に負えないと分かった時点で管理会社に連絡することです。建物側の断熱や設備に原因がある場合もあり、それは借主が対処すべきことではありません。ただし、気づいていながら報告せずに被害を広げた場合は、その放置のほうが問題になります。連絡した記録が残っていること自体が、後で効きます。
測るなら3か所
上の表を自分の部屋に当てはめるには、数字が要ります。測る場所は3つです。
- 室温と湿度:温湿度計を窓際ではなく部屋の中央付近に置く。窓際だと部屋の代表値になりません
- 窓ガラスの室内側の表面温度:ここが露点を下回っているかどうかが本題です。放射温度計があれば一瞬で分かります
- 外壁側の壁の表面温度(家具の裏):窓は目につくので気づきますが、家具の裏は気づきません。ここが冷えていないかを見ておく
2と3が露点を上回っていれば、湿度を下げる努力は要りません。下回っているなら、湿度を下げるより先に、その面を暖めるか空気を当てるほうが効きます。どちらの問題なのかを切り分けてから動いたほうが、対策は短く済みます。
まとめ
- 結露は湿度の問題ではなく温度差の問題。露点より冷たい面があるかどうかで決まる
- 室温20℃・湿度50%なら露点は9.3℃。それより冷たい面が濡れる
- 湿度を40%→60%に上げると露点が6℃上がる。加湿器を使えば結露は増える。仕組み上そうなるので、織り込んで選ぶ
- 加湿器は床・窓際・壁際を避け、部屋の中央寄りで少し高い位置に。水はメーカー指定どおり水道水
- 洗剤を塗っても結露の量は減りません。水滴が膜になって流れるだけで、水はサッシに集まります。掃除を楽にする手であって、断熱や除湿の代わりにはなりません
- 部屋側でできるのは冷たい面を減らす/湿気を出さない/空気を止めないの3つだけ
- 外壁側の家具は壁から5cmほど離す。狭い部屋ほどここを詰めがち
- 開放式の石油・ガス暖房は燃やした燃料とほぼ同量の水を部屋に出す
- 賃貸では放置してカビやシミを広げると、修繕費が借主負担になり得る。手に負えないと分かったら管理会社に連絡する
結露は毎朝拭くものだと思われがちですが、拭く量が多いということは、どこかの面が想定より冷えているということです。拭く前に、その面が何℃なのかを一度だけ測ってみてください。そこから先の判断は、上の表だけで足ります。
※露点温度は Magnus の式により当サイトが算出した値です。α = ln(RH/100) + (a×T)/(b+T)、露点 = (b×α)/(a−α)、a = 17.62、b = 243.12℃(T は室温℃、RH は相対湿度%)。実際の結露の起こりやすさは、断熱性能・気密性・外気温・空気の流れによって変わります。表面温度や湿度の測定値は、測定機器と測定位置によって差が出ます。加湿器の使用水・設置条件は機種ごとに指定が異なるため、各機種の取扱説明書をご確認ください。原状回復の負担区分は個々の賃貸借契約や物件の状況によって判断が異なります。実際のトラブルについては、契約書の確認と、管理会社・自治体の相談窓口へのご相談をおすすめします。

